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「相続放棄」とは?知らずに単純承認してしまった実話を交えて解説

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相続放棄のメリットやデメリットを知りたいと思っていませんか?

マイナスの財産があるからって相続放棄をしても場合によっては無料どころか100万円ほどの報酬が必要となることもあります。

相続放棄をすることによって疎遠となっていた親戚に迷惑をかけ恨まれることもあり得ますので相続放棄に関する知識を得ることはとても重要です

こちらを最後まで読めば相続放棄に関する疑問が解けるだけでなく、実際に起きた相続放棄によるトラブルエピソードも交えますので今のお悩みの解決策となることは間違いありません。

⒈相続放棄とは?

なまず教授
なまず教授
「相続放棄とは、個人が持っていた資産を何も引き継がないという意思表示として、権利を放棄するという法律行為」のことを言うよ。

なお、相続とは、亡くなった人の家族が故人の資産を引き継ぐことを指しますよね。

資産には預貯金や不動産、貴金属や骨とう品などのプラスの資産があるほか、借金のようにマイナスのものもあります。

つまり、相続をするということは、プラスの資産だけではなくマイナスのものも含めて引き継ぐことになりますよね。

高齢の親が亡くなった時、相続をすることによって親が抱えていた多額の借金まで背負うことになってしまうというケースは珍しくありません。

そんなことになるのなら、いっそのこと相続なんてしたくない、という時に選択肢となるのが、相続放棄なのです。

そこで先ずは相続におけるプラスの財産とマイナスの財産を把握していきましょう。

プラスの財産とマイナスの財産とは?

●プラスの相続財産
土地例:宅地、農地、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地、雑種地など
土地の上に存在する権利例:借地権、借家権、定期借地権、地上権など
家屋・設備・構築物例:戸建住宅、共同住宅、マンション、店舗、工場、貸家、駐車場、庭園設備等の付属設備など
預貯金・現金・貸金庫の中にある財産※預貯金には、被相続人名義の預貯金だけでなく
家族などの第三者の名義になっているものの、実質的には被相続人に帰属するものも含む場合があります
国債証券・社債・株式・手形・小切手などの有価証券例:国債(個人向け国債)、地方債、社債(金融債、事業債、転換社債)、上場株式、非上場株式、受益証券(貸付信託、証券投資信託、不動産投資信託、抵当証券)など
貸付金、立替金などの債権例:第三者への貸付金債権、税金の還付金債権、未収報酬債権、損害賠償請求権、慰謝料請求権など
知的財産権例:著作権、工業所有権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権)など
事業用財産例:機械器具、農耕具、棚卸資産(商品、製品、原材料)、売掛債権など
個人事業のために使い、それにより生じた財産
家庭用財産例:自動車や貴金属、絵画骨董品
その他例:立竹木、ゴルフ会員権、占有権、形成権(取消権、解除権、遺留分侵害額請求権)など
相続人は、被相続人の一身に専属したもの以外の権利を承継します
●マイナスの相続財産
借入金例:住宅ローンの残高債務、車のローンなどの割賦契約月割賦金、クレジット残債務など
未払金例:土地や建物を借りていた際の賃借料、水道光熱費、通信費、管理費、リース料、医療費など
敷金・保証金・預り金・買掛金・前受金例:被相続人が第三者に土地等を貸している場合、賃貸物件に関連して預かっている敷金や預り保証金、建築協力金など。被相続人が事業等を行っていた場合、買掛金、前受金など
保証債務、連帯債務※責任限度・責任期間の定めのない信用保証や身元保証は原則として相続されませんが、通常の保証債務は相続されます
公租公課例:所得税、消費税、住民税、固定資産税、土地計画税、相続税(延納)、贈与税、国民健康保険料など

相続放棄とは、個人が持っていた資産を何も引き継がないという意思表示として、権利を放棄するという法律行為となりますね。

相続放棄をする際には、自分が相続権を放棄することによって誰かに迷惑がかかることにならないかという点を考えなければいけません。

相続の順番とは?

相続には順番がありますよね。

第1順位の相続人は、故人の子供となります。

子供が相続放棄をすると、第2順位は故人の両親となります。

続いて、故人の兄弟に相続権が移ります。

この相続権は、相続するべき人がすでに亡くなっていて存在しない場合や、相続放棄した場合などに、次の順位へと移っていきます。

自分が相続放棄したことによって、別の誰かに迷惑がかかってしまう可能性があるなら注意したいですね。

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⒉相続放棄ができる期間は決められている

相続放棄ができる期間は、「熟慮期間」と呼ばれています。

この期間は、自分が相続することを知った時から3か月以内と定められています。

故人の死亡日から3ヶ月間というわけではないことを覚えておきましょう。

⒊相続放棄で注意したいのは建物管理義務

建物には、一定レベル以上の安全性を保った管理がされていなければいけないという義務があります。

これは、建物の管理義務と呼ばれていますね。

例えば、遠方に住んでいた高齢の親がなくなり、親の自宅を子供が相続する場合を考えましょう。

相続した子供には、誰も住んでいない親の自宅を安全な状態に維持する義務が発生することになります。

誰かがそこに住んでいれば、建物の状態や環境を管理することは可能です。

一方、遠方に住んでいるとそうした部分までなかなか管理できないことが少なくありませんよね。

そうすると、建物の経年劣化によって、台風の時に瓦が飛んで近隣の住宅に被害を与えてしまうなどのトラブルが起こりやすくなってしまいます。

相続の権利を持つ人が相続放棄をした場合、相続に伴うこうした義務は、次に相続権を持つ人へと移行していくことになります。

プラスの資産よりもマイナスの資産の方が多く、故人からの相続を放棄したい場合には、建物管理義務などについても考えた上で、適切な手続きを速やかにすることが必要ですね。

⒋相続放棄は無料じゃない?

相続放棄をすると、プラスの資産もマイナスの財産も、すべてまとめて相続する権利を放棄することになります。

ただし、注意したいのは、相続放棄をしても、空き家の管理義務が残ってしまうという点ですね。

第1順位、第2順位、第3順位と全ての家族が相続放棄をすると、故人の資産は行き場を失ってしまうため、相続財産を法人の管理人へ依頼するための申し立てを行うことになります。

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申し立てをする際にかかる費用はそれほど高額ではありません。

収入印紙代や官報広告費用などで5,000円以内です。

ただし、相続財産管理人への報酬が数十万円から100万円程度かかることになります。

マイナスの財産を背負いたくないから相続を放棄したのに、手続きで100万円近くの費用が発生して、相続権を持っている人にとって大きな経済的負担となるということがあり得ますね。

一般的に、この相続財産管理人への報酬は、故人が残した相続財産から支払われることになります。

とはいえ、必ずしも個人が相続財産を残しているというわけではなく、相続財産から支払えないケースもありますよね。

この場合には、家庭裁判所が予納金として金額を決定してくれるので、それを家族が工面して支払わなければいけません。

⒌相続放棄の件数と推移

●相続放棄の件数の推移
年度
件数
平成21年156,419件
平成22年160,293件
平成23年166,463件
平成24年169,300件
平成25年172,936件
平成26年182,082件
平成27年189,296件
平成28年197,656件
平成29年205,909件
平成30年215,320件
参考:裁判所ホームページ 司法統計年報家事事件編(平成30年度)ほか を基にハルサロ事務局が作成

相続放棄件数をご覧いただいた次は、実際に起きた相続放棄によるトラブルエピソードをご紹介してまいりましょう。

⒍実際に起きた「相続放棄」トラブルエピソード全1話

知らずに法定単純承認となる行為をしてしまった

母と20歳を過ぎた二人の姉妹(子)の3人暮らしをしていた家庭での相続でした。

突然母親が病気で亡くなってしまい、とにかく葬式を行って、いろいろとドタバタしているうちに相続の手続きを進めずに一月ほど過ぎたとのことでした。

特に財産のなかった家庭で、住居は賃貸マンション、貯金は数カ月の生活費程度にあたる金額で50万円ほどでした。

そのほかはちょっとしたブランド品や宝石類があっただけでした。しかも生命保険は前に解約していて、保険金が入る予定もありません。

ですが、母親には多額な借金があったんです。

二人の子はその事実を全く知らなかったようで、後で知ってたいへんに驚いたと言っていました。

借金は母親の浪費が原因で、頻繁に海外旅行をしては多額の買い物をしていたんですね。

それで5枚のクレジットカードの返済残高が300万円以上、それから消費者金融からも200万円ぐらい借りていたことが分かりました。

慌てて法律事務所を訪れて、財産放棄の手続きについてお願いしたそうですが、事情を聴いた弁護士さんはその依頼を断ったんだそうです。

なんでも、その姉妹は葬式の後に母親の銀行口座から数万円を引き出して、自分のための支払いを済ませていたんですね。

この数万円のお金は母の所有財産でしたから、お金を口座から引き出して自分のために使ってしまったという行為が、そのまま遺産を相続した行為だと判断されてしまうわけなんですね。

なまず教授
なまず教授
このように、相続人にあたる人が相続開始の事実を知りながら、被相続人(亡くなった遺産の所有者)の財産を私的に処分したり、隠したりする行為を相続の単純承認とみなすんだよ。

例えそのつもりがなくても、単純承認のルールを知らなかったとしても、今回のように被相続人のお金を自分で使ってしまう行為は相続をした理由となるんですね。

この類のトラブルは、相続の場面でよく見られます。

家庭裁判所で相続放棄の申し立てを受理された後で、債権者からの調査で相続人がすでに資産を私的に利用したことが発覚すれば、裁判所は単純承認したものとみなして相続放棄を無効とし、債務をそっくり引き継ぐことになってしまいます。

ただし、葬儀費用を被相続人の資産から支払ったというケースでは、裁判所が『単純承認に当たらない』との判決を出した例があります。

もちろん、身分相応の葬儀に限るという但し書きはありましたが、この判例によって葬儀費用や墓石購入の費用を遺産から支払っても相続放棄が認められる可能性は高いでしょうね。

また、形見分けを受け取ったという行為も、裁判所が『単純承認に当たらない』との判決を出した例があります。

数百万もの宝石やアクセサリーはともかく、一般的に着衣や身回りの品物はほとんど経済価値のないものとみなされるようです。

ですから、形見分けを受け取った後でも相続放棄を申し立てることはできるでしょう。

相続放棄で負の財産を相続しないためには有効手段ですが、細かいルールがありますので事前の情報収集と専門家のアドバイスを受けるのが良いかもしれません。

司法書士法人あおばの杜https://sakata-office.com/post1158/

⒎まとめ

相続権はいつどこからやってくるか分からないですね。

相続権というと、自分が普段からコミュニケーションをとっている両親からの相続をイメージする人が多いものです。

とはいえ、近年では、子供の頃に親が離婚してほぼ交流がなかった親や、疎遠な親戚からの相続などに関する相談やトラブルが増えています。

相続権は、第1順位の人が放棄すると第2順位に移行して、その人が放棄すると第3順位となります。

これまであまり接点がなかった人からの相続となると、プラスの資産だけではなく多額の借金といったマイナスの財産も相続権と一緒に降りかかることになりかねませんよね。

そのため、よく分からない相続権の影響を受けそうになった場合には、必ず弁護士など専門家に相談をした上で慎重に検討し、相続放棄するなら期間内に法的な手続きを行うようにしてくださいね。

この度も最後までお読みいただきまして有難うございました。

実際に起きた「相続放棄」トラブル全2話「法定相続人で揉めた」他